主なデジタルカメラの種類
2020年現在、デジタルカメラをその構造で分類すると、主に「コンパクト」「ミラーレス」「一眼レフ」の3種類に分類することができます。
「反射式光学ファインダー」を備えているものが「一眼レフ」で、そうでないもののうちレンズを交換できるものが「ミラーレス」、レンズを交換できないものが「コンパクト」です。
反射式光学ファインダー | |||
---|---|---|---|
ある | ない | ||
レンズ | 交換式 | 一眼レフ | ミラーレス |
固定式 | コンパクト |
反射式光学ファインダーの有無もレンズ交換の可否も、それ自体では画質に与える影響はありません。ですから、「一眼レフだからコンパクトカメラよりも綺麗な写真が撮れる」とは言えません。ただし、市販されている商品のラインナップとしては、一般に一眼レフやミラーレスの方がコンパクトカメラよりも画質面で有利なケースが多いのは事実です。
コンパクトカメラとミラーレスカメラ
コンパクトカメラとミラーレスカメラは、大体下図のような構造をしています。
図:コンパクトカメラとミラーレスカメラの構造
カメラとして最低限必要な構造は,
- 余計な光を遮る箱(ボディ)
- 像を結ばせるためのレンズ(通常、光の量を調節するための絞りが組み込まれている)
- 光を当てる時間を調節するシャッター
- 像を記録するためのセンサー
の4つです.
コンパクトカメラもミラーレスカメラも、このように図示すると構造は全く同じです。違いは、レンズがボディと一体化していて変更できないのがコンパクトカメラ、レンズをボディから取り外して交換することが出来るのがミラーレスカメラです。
一眼レフカメラ
下図は,一眼レフカメラの構造を模式的に表したものです.光学ファインダーに関係する構造が付け加えられている分,コンパクトカメラやミラーレスカメラの構造に比べて複雑な構造をしています.上のa図はファインダーから被写体を確認できる状態,下のb図はシャッターボタンが押され,センサーに光が当たっている状態を表しています.
図a:一眼レフカメラの構造(フレーミング時)
図b: 一眼レフカメラの構造(レリーズ時)
カメラを構えている時(フレーミング時)には,カメラは図aの状態にあります。
レンズと絞りを通った光が,リフレックスミラーに当たって反射し,ピントグラスに像を結んでいます.ピントグラスとミラーとの位置関係は,センサーとミラーとの位置関係と光学的に同等になるように調節されており,シャッターを押したときにセンサーに出来る像と同じ像が,このピントグラスに映ります.
ピントグラスに像を作った光はペンタプリズムの中で更に反射して,それをファインダーから覗くことになります.このように,被写体から出た光をプリズムやミラー越しに見ることが出来るファインダー,つまり反射式光学ファインダーを持つことが一眼レフの特徴です.
レリーズ時にはリフレックスミラーが上に跳ね上がり,下の図bの状態になります.するとレンズを通った光はシャッターに当たり,このシャッターを開けるとセンサーに像ができ,これを記録することで写真に写るというわけです
一眼レフのレリーズ時の動作(左下の黒い四角をシャッターボタンと思って押してみて下さい)
ところで一眼レフも仕組みから言えばレンズ固定式のものがありうるのですが,実際の製品はすべてレンズを交換することができます.
余録
ペンタプリズムというものは聞き慣れないものですが,大体図のような断面を持ったガラスの塊です.一眼レフカメラの上部は独特の形をしていますが,これはこのペンタプリズムの形です(ただし,比較的安価な一眼レフでは,このペンタプリズムの代わりに鏡を組み合わせたペンタミラーというものを使っていることが多いようです).
実はレンズを通ってピントグラスやセンサーにできる像は被写体の上下左右が反転しています.しかしフレーミング時に上下左右が反転していては不便なので,ミラーとペンタプリズムでさらに反転させて,ファインダーから正しい向きで像が見えるようにしています.
一眼レフだけでなく,ミラーレスカメラとコンパクトカメラでもセンサーに写る像は上下左右が反転していますが,電子的に処理することでモニターや電子ファインダーには正しい向きで表示させています.
デジタルカメラの構造それぞれの特徴
「デジタルカメラの構造と種類」では、「一眼レフ」「ミラーレス」「コンパクト」の違いを分けるのは「反射式光学ファインダー」の有無と「レンズ交換」の可否だと説明しました。ここでは、それらの違いが撮影にどんな影響を与えるのかを見てみましょう。
反射式光学ファインダー
デジタルカメラのファインダーは、一眼レフは反射式光学ファインダー(「光学式」)を、コンパクトとミラーレスは電子ビューファインダーか背面モニタ(「電子式」)を使っています。光学式と電子式を比べると、現在重要な違いは「見え方」「情報表示」「オートフォーカス方式」の3つです。
見え方
レンズやミラーを通して直接光を視る光学式ファインダーと、センサーで受けた光を液晶や有機ELに表示する電子式で見え方が違ってくるのは当然です。やはり光学式ファインダーの方が解像度や色味などが当然鮮明ですし、ダイナミックレンジに制限もありません。電子式ファインダーだと蛍光灯などの光環境下ではチラつきが発生することもあります。
また電子式ファインダーでは、センサーが受けた情報を画像として表示するために計算が必要なので、どうしても一定のタイムラグが生じます。ファインダーに表示される像は、実際よりも僅かに過去の情報なので、スポーツなど動きの速いものの撮影時には不利になります。
ただし、電子式ファインダーの改良により上記のような弱点はどんどん目立たなくなってきています。
一方、電子式ファインダーの有利な点もあり、例えば露出補正や色温度設定などの効果をファインダーに反映できること,またヒストグラムやフォーカスピーキング(マニュアルフォーカス時にピントが合っている部分を表示する機能),電子水準器など,より多くの情報を表示させることが可能です.
オートフォーカス方式
デジタルカメラのオートフォーカス(AF)の仕組みは大きく分けて「位相差式」と「コントラスト式」の2種類あります.
位相差式とは,まず被写体までの距離を測り,その距離でピントが合うようにレンズをいっぺんに動かす方式です.実際にピントが合っているかは確認しないので,ピントが合うのが早い反面、レンズの製造精度や測距の精度によっては微妙にピントが合わないこともあります。
コントラスト式とは,レンズを少しずつ動かして,動かす前後でどちらが鮮明かを比較し,より鮮明に画像が写る位置を探していく方式です.試行錯誤でレンズを前後に動かしては比較するので,比較的時間が掛かりますが,実際にピントが合っていることを確認するので正確です.
つまり位相差式の方がピントが合うまでの時間が短く,コントラスト式の方がピントの精度が高いという特徴があります.2つの方式のピント精度の差は実用上大きくないのに対し,ピントが合うまでの時間は位相差式の方が明確に早くしやすいので,特に動く被写体の撮影には位相差式の方が有利です.
もともと位相差式オートフォーカスの機構は反射式光学ファインダーの構造を利用していました。その結果一眼レフは位相差式,コンパクトとミラーレスはコントラスト式のAF方式になり,AF速度も一眼レフの方が有利でした.
ただし,後に撮像センサーに位相差式AFの機構を組み込む「像面位相差式」という仕組みが開発され,ミラーレスやコンパクトのAF速度も一眼レフとほぼ同等になりました.それどころか、従来の位相差式AFセンサーは,画面周辺部分でのピント合わせに対応しにくい一方,像面位相差式では,ほぼ画面全域でピント合わせができるという利点があります.また像面位相差式AF機構を組み込んだセンサーは仕組み上,若干画質が落ちることになっていますが,2020年現在ではほぼ分からないレベルになっています.
レンズ交換
レンズ交換は撮れる写真のバリエーションを確保する上で,非常に重要な要素です.広角,標準,望遠だけでなく,魚眼レンズやシフトレンズ,マクロレンズなど様々なレンズを駆使することで,同じ被写体を撮影するにしても幅広い表現が可能になります.写真の写りに大きな影響を与えるのはボディよりもむしろレンズとも言えますので、レンズ交換が出来ることは大きな魅力と言えます。
一眼レフ、ミラーレス、コンパクトカメラの画質の違い
一眼レフとミラーレス,コンパクトカメラに原理的な画質の優劣はありません.同等の性能を持ったレンズとセンサーを備えていれば,どの方式でも同等の画質の写真を撮ることができます.むしろレンズとセンサーが同等ならば、システム全体を統合して設計でき,組み立て精度も確保しやすいコンパクトカメラの方が画質がよくなることも考えられます.
本質的に画質に影響を与えるもののうち,最大の要素は一眼レフかコンパクトかという方式の違いでは無く,センサーサイズであると言えるでしょう.コンパクトカメラには小さいセンサーが,一眼レフには大きいセンサーが搭載されているケースが多いため,一眼レフの画質が良い傾向がありますが,それはカメラの方式の違いとは別の要因に寄るものです.センサーサイズと写真の関係については,後の章で詳しく解説します.
構造 | ||||
---|---|---|---|---|
一眼レフ | ミラーレス | コンパクト | ||
センサーサイズ | 中判 | Pentax 645Z | Fujifilm GFX | |
フルサイズ | Canon 1DX | Nikon Z7 | Leica Q | |
APS-C | Nikon D5600 | Canon Kiss M | Ricoh GR | |
フォーサーズ | Olympus E-5 | Olympus OM-D | Panasonic DC-LX100M2 | |
1インチ | Nikon 1 J5 | Sony RX10 | ||
1インチ未満 | Pentax Q | 大部分のコンパクト スマホのカメラ全般 |
余録
パララックス
フィルム時代のコンパクトカメラやレンジファインダー式カメラには(当然ですが)液晶モニタは付属せず,カメラのどこかに小さなのぞき穴のようなものがついていて,撮影時にはそこから直接被写体をみながらシャッターを押していました.ところが,こののぞき穴はもちろん撮影のためのレンズとはちょっと離れた位置につけざるを得ないので,のぞき穴から見える風景とレンズを通してフィルムに写る風景は,どうしても若干ずれてしまいます(この「ずれ」のことを「パララックス」と呼びます).特にカメラからの距離が短い被写体では,この影響は大きくなります.さらにレンズの直前に障害物があってものぞき穴からは見えないので,レンズキャップをしたまま撮影してしまったり,指やストラップが写り込むという現象は,初心者にありがちな失敗としてよく笑い話になっていました.
一眼レフに使われている反射式光学ファインダーは,この「パララックス」を無くすための工夫から生まれた仕組みです.前述の通り,一眼レフカメラではファインダーを覗くとピントグラスに映った像を見ることが出来ます.そしてピントグラス上の像は,シャッターを切ったときにセンサー上にできる像と同等になるように設計されています.つまり,一眼レフのファインダーをのぞくと,シャッターを押したときにセンサーにできる像と,ほぼ同じものをみることができるのです.もちろんレンズの直前に障害物があっても,ファインダーから見えるので,キャップをしたまま撮影などという失敗は起こりません.
というのが,フィルム時代の一眼レフのファインダーの大きな利点だったのですが,現在は事情が変わります.現在はフィルムの代わりにセンサーを使っているので,コンパクトカメラの(もちろんミラーレスや一眼レフでも)液晶モニタや電子ビューファインダーには,そのセンサーに写った像がそのまま表示されます.なので,このパララックスの有無の違いはもう解消されてしまいました.
一眼レフ」ってどういう意味?
まず後ろに付いている「レフ」ですが,これは「レフレックス reflex」の略で,反射を現します.つまり,反射式光学ファインダーの鏡で光線を「反射」させていることを表しています.これはレンジファインダーやビューカメラなど,鏡による反射が機構に含まれていないカメラと対比しての表現です.ミラーレスカメラにも反射式光学ファインダーが付いていないので,「レフ」とは呼ばれません.そして,このファインダーの鏡(ミラー)が付いていないので「ミラーレス」と呼んでいます.
一方,一眼レフ以外に「レフ」が付くカメラとしては,「二眼レフ」という種類があります.たぶんご覧になったことがあると思いますが,レンズが縦に2つ並んだカメラのことです.お察しの通り,この「二眼」とは,レンズが2つあることを現しており,一眼レフの「一眼」とは,二眼レフと対比したときにレンズが1つしかない事を表現しています.
現在のカメラの方式の呼称はメーカーによってまちまちで,「一眼レフ」「ミラーレス」「ノンレフレックス(広義にはミラーレスとコンパクト,狭義にはミラーレス)」「デジタル一眼カメラ(広義には一眼レフとミラーレス,狭義にはミラーレス)」,さらには「レンズ交換式アドバンストカメラ(ニコンの1インチセンサーミラーレス)」というものまであります.コンパクトカメラだってレンズは一つなのに「デジタル一眼カメラ」には含まれないなどややこしく,消費者としては業界で呼称を統一していただいた方が分かりやすいのですが,それぞれこだわりがあるようです.
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